『音楽劇 ヴォイツェク−Woyzeck−』@赤坂ACTシアター(13:00〜)

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原作:ゲオルク・ビューヒナー/脚本:赤堀雅秋/演出:白井晃/音楽:三宅純
美術:松井るみ/照明:齋藤茂男/音響:井上正弘/衣裳:伊藤佐智子/ヘアメイク:川端富雄
アクション:渥美博/振付:井手茂太/歌唱指導:満田恵子/舞台監督:有馬則純/技術監督:大平久美/演出助手:西祐子、松森望宏
出演:山本耕史/マイコ/石黒英雄良知真次/池下重大/青山草太/日比大介/駒木根隆介/加藤貴彦/半海一晃春海四方真行寺君枝/今村ねずみ/団時朗/他

最高に美しい無垢と、最低に醜い無知。
そして狂気という隣人。日常と狂気の壁はそんなに強いものじゃない。ひととしての心がある限り、些細なことでもろもろと崩れ去る。
以前白井さんが演出した、スペインのガルシア・ロルカの戯曲『血の婚礼』より、表現されたものが掴みやすかったと思います。スペインという独特の陰影の不条理はちょっと近寄り難かったので。ヨーロッパの古い根強い因習が根底にあった『血の婚礼』と違って、『ヴォイツェク』はボーダレスな感じを受けました。無知と貧困と差別が存在しない場所なんてありませんから。
思えば、日本人は結構不条理に馴染んできたはずなんですよね。歌舞伎の世界は不条理に満ち満ちてます。物語は歴史上の出来事はもちろん、江戸時代に起きた事件が元。明日をも知れない庶民のささやかな生活、明日への不安や不満。時代が移っても国が変わってもそこには隔絶の感はないように思います。
ラスト近くの水辺の場面。『かさね』を少し思い出しました。