NHKBSプレミアム 『軍師官兵衛』#12 “人質松寿丸” 18:00〜18:45

録画済。


こんなに地味で大丈夫か、といういつものとんちんかんばばあのブログの呟きを見ましたが、官兵衛を主人公に据える時点で地味になるのはあたりまえじゃんか。こういうバカが、戦国が信玄謙信信長秀吉家康だけで出来上がってると思ってんだろうなあ。

つまり、戦国時代というのは非常に不安な時代で、それゆえにはったりの時代になるんですね。つまり実力者が本当に腕力だけで、あるいは金力だけでは心もとない。自分を励ます見掛けをつくらなければならない。もちろん、見掛けを承諾してくれる観客、他人の目が前提なんですけれども、それ以前に、まず自分自身に対して自分を演じてみせなければならない不安があった。その原型を探っていくと、私は信長だったと思う。

丸谷才一山崎正和『日本史を読む』(中公文庫)より抜粋

戦国・安土桃山時代を“演劇的時代”とした丸谷才一氏と山崎正和氏。そういう意味ではったりの達人ばかりの諸将の中で、官兵衛は地味にならざるを得ない(爆)。というか立場上及び彼の性格上、はったりかます必要はなかったわけで……。決して彩り華やかではなかった官兵衛の人生を、1年の大河でドラマティックに描くのは難しいでしょうけど、制作陣には頑張っていただきたい。
てなわけで、今回ははったり達人のひとり・松永久秀ミッキー・カーチス)登場して退場。合掌。

松永にすれば、越後の上杉謙信が信長の敵になったときいたとき、もはや信長の時代は終わったとみたのである。
(中略)
兵として、越後兵は、天下無双といってよかった。松永の戦略感覚からすれば、東に上杉、中央に本願寺、西に毛利氏という大敵にかこまれて、織田氏が存続できるはずがなかった。
松永のその目が、狂っていたとはいえない。
謙信はただ松永が期待したようには、上方に攻めこんで来ることをしなかったのである。
(中略)
松永は、孤立した。

司馬遼太郎播磨灘物語』上(講談社)“野装束”より抜粋

短時間の出演時間ながら、なかなか見応えのある久秀でした。彼メインでまるごと1話作ってほしかったわ。
信長を裏切り自害した久秀。処刑された織田家人質の久秀の息子たち。播磨の諸侯が人質を出す意味。政職(片岡鶴太郎)の逡巡。松寿丸(若山耀人)を人質として差し出す官兵衛(岡田准一)の決心。無理のない流れで非常に解りやすかったと思います。光(中谷美紀)の拒否は、戦国時代の武家の女としてはアレですけども、夫の上司がアレですからまあ、気持ちはわからんでもない(苦笑)。
そしてわずか9歳の松寿丸の決意。母親と違って(爆)幼いながらもこの時代の武将の子として生れた宿命を端然と受け入れました(涙)。

官兵衛は、近江長浜城に松寿丸を連れて行った。秀吉は玄関まで出迎えるという手厚さで、
「この松寿丸を、わが子と思って育てよう」
と、言い、松寿丸にも声をかけた。
このあと、別室で二人で夜を徹して語った。
秀吉は、
「上様の御肚は決まっている。播州へ入る日も近い」
と、いった。秀吉にすれば播州諸家から人質をとるのは、自分が播州に入ってからのことにしようといった。
要するに、織田家は一豪族の家老にすぎぬ官兵衛ひとりから人質をとっただけで、播州入りをしようというのである。放胆ともいえるし、官兵衛をそれほどに信頼したともいえるであろう。

司馬遼太郎播磨灘物語』上(講談社)“野装束”より抜粋

ドラマ内では赤松氏が先に人質出したとか言ってたようだけど、官兵衛クローズアップには司馬さんの描き方の方がいいかもしれない。


追記 3/24 22:47
http://togetter.com/li/646077/
こんなまとめができてました。
私はどっちのパターンも観てる(読んでる)ので、まあどっちでもと思ったんですけども。どっちかわからんし、平蜘蛛は残ってるかもしれんし(爆)。ちなみに司馬さんは、「松永久秀は自分の首を煙硝で吹っとばしてこの世から消えた。(『播磨灘物語』)」「弾正は秘蔵の平蜘蛛の茶釜を微塵にくだき、わが手で命を絶った。(『果心居士の幻術』)」等々。他の司馬さんの戦国モノにも出てたと思うけど探すのめんどい(汗)。