- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/06/10
- メディア: 文庫
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これから本編読むんだけどあとがきは先に読んじゃった。そう、ちゃんとあとがきあるのよ。さすがあとがき作家(笑)。“(笑)”なんて書いたけどさ読んでくうちに涙が。それでも128巻のあとがきを期待してしまうんだよね。
量を書くだけでも途方もない腕力がいるというのに、グインのそれは物語を編む人物群像を眺める毎に茫然となる。これは日本人好みのささやかな名人芸の独奏ではない、はるかにパワフルな巨大編成のオーケストラだ。パーツひとつひとつに投げられた作者の視線をたどって、この人物はこうして生を全うするのか、このキャラはここで燦爛と消えるのか−全宇宙が作者の掌上に踊る人工物であるにもかかわらず、ぼくはその都度登場人物に感情移入させられ、ワクワクしたことを白状しよう。
文学だろうがアートだろうが知ったことではない。作品世界に対峙したときの読者の至福感こそ、何物にも替えがたい喜びであってみれば、120巻余にわたって楽しみを提供してくれた栗本“グイン”薫を、ぼくは尊敬してやまないのだ。日本が生んだ最大のストーリーテラーのご冥福を祈る。