獣木野生 PALM第34巻『蜘蛛の紋様 Vol.5』

パーム (34) 蜘蛛の紋様 (5) (ウィングス・コミックス)

パーム (34) 蜘蛛の紋様 (5) (ウィングス・コミックス)

始まりへ近づいてきた。懐かしい“あるはずのない海”へ。
そういえば「人類はプルトニウムを使いこなせない」とジェームスが言ってたなあ。

人類はプルトニウムを使いこなせない。再処理、輸送、利用廃棄物処理−あらゆる段階でリスクとコストが大きすぎ採算が合わないんだ。近い将来、世界各国で高速増殖炉が次々閉鎖されるだろう。
木材や農作物などの植物資源は、乱伐や土壌劣化などによる表土流出だけでなく、異常気象や酸性雨などによってもダメージを受ける。(中略)その上に大気のオゾン層が破壊されつつあるという説もある。これが現実となれば、破壊の進行とともに作物の収穫はさらに減少し、また植物プランクトンの減少が、既存の海洋汚染や乱獲、大型海洋生物の減少による食物連鎖の破壊で痩せ細った生態系に追い討ちをかけることになるだろう。
(中略)
もちろん今のところ収穫量は維持されている。当然だろう。そのためにありとあらゆることがなされているんだ。だが経済学的にあらわされるのは収穫や生産量のデータだけだ。資源そのものは大局的に見て確実に減少し続け、その苗床は確実に疲弊の度合いを深めている。
(中略)
貨幣はもともと物々交換する資源の代用として生まれた。だが貨幣はひとり歩きをし、現在では資本が世の中を動かしている。だが本来の収入は自然からの収入だ。それは今も変わっていない。自然からの収入が絶たれれば経済は当然破綻する。
経済にもし閉鎖系や環境容量といった発想が取り入れられないままなら必ず起こりえることだ。現在、GNPは進歩の指標だ。だがのちの世では、どれだけ資源を消費し生産したかよりも、リサイクルを含めてどれだけ恒久的に利用したか、より持続可能な方法で天然資源を採取したかが重要になり、多くの労働力がこれに必要とされるだろう。
自然界は循環で成り立っている。経済界も循環機能を持つべきだ。

伸たまき*1 PALM第20巻『愛でなくⅥ』(1995年10月5日・初版発行)より抜粋

*1:当時。現在、獣木野生