NHKBSプレミアム 『薄桜記』#8 “両成敗” 20:00〜20:45

録画済。


出羽米沢藩上杉家江戸家老千坂兵部(草刈正雄)に合掌。
「長兵衛、お前は浅野家の討入りが……あると思うか?」
「そりゃああった方が面白いでしょう」
仇討ちはもとより、処刑見物さえ娯楽のひとつだった江戸庶民の本心ですな。良い例が“高田馬場の決闘”。大盛り上がりだったじゃないですか。タイトル忘れたけど、星新一の作品にもそんな雰囲気のがありました。
武士の誇りと理屈と政治。それらの先行きを左右しかねないほどの庶民の様々な声。松之廊下以後の流れが非常にわかりやすく描かれててさすがジェームス三木。「なぜ松之廊下に至ったか」ではなく「松之廊下事件の影響を受けた人々がどうなって何をしたか」です。
ただ、「なぜ」の部分での重要な問題がひとつ。遺恨か乱心か。幕府はさして詮議もせずにソッコー切腹決定。浅野家はもちろんぶったまげに決まってますが、単純に考えれば喜ぶべき(というと語弊があるけど)被害者の吉良上野介長塚京三)が抱いたのは危機感。さすが高家筆頭。そして同じく千坂兵部も。………惜しい人を亡くしました。吉良家のスリーアミーゴスは暢気だもんなあ。権兵衛(辰巳琢郎)は自分ちのことしか考えてないし(爆)。ま、兵部と良い対比ではありました。
兵部の遺言を典膳(山本耕史)に伝える龍之進(忍成修吾)。彼には、上杉家江戸家老長尾権兵衛の嫡男としての武士の誇りがあり理屈があり政治がある。四年を要した謝罪。当時の事を収めた兵部は自分の死期を見越して、典膳と龍之進のためにこのステージを用意した。自分が死ねば二人の枷は外れる。………なんてね。千坂の本心はわかりませんが、四年前の事件の後始末に吉良家を利用した手腕はお見事でございます(爆)。
「遺恨であればわだかまりが残る。乱心であれば、水に流す」
乱心と答えるしかない龍之進。
またそれを期待していた典膳。彼は度量が大きいわけでもなく、情に流されたわけでもなく、彼にも武士の誇りがあり理屈があり政治があるわけです。今、武士としてどうすべきか。それのみ。
でも色々思うところはあるわけで。あのラストの哀しげな微笑みは堪りませんな。
千春(柴本幸)と会った時のにこやかな顔を見た後だからよけいに。