サイバラのある部分だけ見てるととてつもなくぶっとんだひとだと思うけど、実際、ものすごく頭は良いし、ものすごく働き者だし、ものすごくまっとうな精神の持ち主なんだよね。
大月*1 「日中戦争が始まって、文学者はみんな「戦地ルポを書け」って戦地に駆り出されるんだ。当時は海軍がかっこよかったもんで吉屋信子は海軍へ。それで林芙美子は、久米正雄なんかと一緒に陸軍へついて行った。そこで林芙美子のすごいのは、兵隊と一緒に早起きして、ひとり最前線について行く。で、最前線の戦闘の様子なんかを書いて、吉屋信子以下、他の連中の鼻をあかすんだけど……」
西原 「ああ、それって、絶対私がやりそうなことですね。一番危ないところに真っ先に行って、「弾が当たったらめっけもん」って、うろちょろして見せたり(笑)。(中略)現場に行くって、そのことに関しては、絶対に負けたくないから」
大月 「だろうなあ。林芙美子も自分の椅子を守るために、どうやってまわりを蹴落としてきたかっていうのが、当時から取り沙汰されていたし、弔辞で川端康成なんかもそのへんはほのめかしたりしたくらいなんだけど……」
西原 「別に、蹴落とさなくたっていいんですよ。誰よりも早起きすりゃいいんですから」
大月 「そっちの方が、直接蹴落とそうとするよりタチ悪いかもな。で、そのことによってどれだけの人が顔を潰されるか、なんてのはもう眼中にないわけだよな」
西原 「そんなの考えたこともない〜(笑)。なんで〜?怠け者はご飯が食べられないのは当たり前でしょ〜」