NHKBShi 『龍馬伝』#36 “寺田屋騒動” 18:00〜18:45

寺田屋大騒動”は今回より約1年前。もちろん『新選組!』ですよ。あの喪明けの回ですよ。わんこ斎藤が紐かじかじの回ですよ(そこか)。あ、わんこのご妻女がご懐妊だそうで。おめでとうございます。
さて慶応二年の寺田屋。ほぼ史実どおりで演出も良かったんじゃないかな。助かるとわかっていても緊迫感は十分伝わってきました。
筧さんの三吉慎蔵カッコよかったー。薩摩藩邸へ向かう途中での大立ち回りは実際はないはずだけど、今回はあっても無問題。流れとしては不自然さはないもんね。それに慎蔵に筧さんもってくるんなら見せ場作らないわけにはねえ。竹を使っての応戦で、無駄な動きのないことといったらもう。さすが少林拳有段者。
お龍(真木よう子)も迫真。男性陣期待のショットは少なかったけどNHKじゃあれが限界っしょ。
龍馬(福山雅治)は相変わらず饒舌(汗)。木場の屋根のシーンはちょっと冗長気味でした。寺田屋で発砲してたけど捕吏は死んでる?。実際は、龍馬は寺田屋で捕吏を射殺してます。近江屋での龍馬暗殺にも繋がるのになあ。まあこの大河の龍馬は“手を汚さない”設定なので、その辺はスルーになっちゃうのかも。あと戸板で運んでたら絶対見つかるぞー。ここは史実の舟にしてほしかった。

一方、薩摩屋敷である。
留守居役大山彦八はおりょうの注進を受けて驚き、邸内に十人ほどいる人数をぜんぶ武装させて門内に待機させる一方、三人の中間のうち一人を京の西郷のもとに走らせて急を報じた。更に一人を寺田屋、一人を市中に走らせて事情を偵察した。
(中略)
その朝の光のなかを、三吉慎蔵は、走りに走った。やっと薩摩藩邸に駆けこむと、門が八ノ字にひらいている。
飛び込んだ。
その姿をみるなり、玄関からとびだしてきた留守居役大山彦八は、
「ご、ご無事でごわしたか」
と、抱きつかんばかりにした。
「坂本殿はいずれに」
「木場です。早く迎えに行ってください」
「心得たり」
と、大山彦八は、おそらくこの男が生涯これほど忙しい時間を持ったことがないであろうほどの機敏な動き方をした。
「門を閉じよ。裏口で舟の支度をせい。舟には船印を樹てい」
とまず命じ、自分と同行する者、残留する者を指名し、残留者に
「幕兵がもし押し寄せてくれば、島津七十七万石の実力と名誉にかけて一歩たりとも入れるな」
と、厳命した。島津七十七万石の実力にかけて、と言うが、藩邸で居残って幕兵をふせぐべき人数は一人であった。一人にこれほどの「大命」を凛々とあたえるところが、薩摩の家風をほうふつさせておもしろい。
(2ページほど省略)
寺田屋一件の変報をうけたとき、西郷は、昨夜の薩長連合締盟についての疲れで、いつもより朝が遅く、やっと起きて井戸端で顔をあらっていた。
「ほ?」
と、顔をあげた。
「なにを言うちょるな?」
中村半次郎が駆けよってきてわめいていた。そのわめき方がすさまじいので、西郷ははじめなにをいっているのかわからなかったが、やがて事態がわかると、
「半次郎どん、兵を用意せい」
と、どなった。
西郷の顔が、血膨れて真赤になっていた。この巨漢がこれほどの怒気を発した姿を、半次郎はついに生涯みたことがない。
「承った」
と、叫んで、半次郎は屋内へ入った。
西郷も御用部屋に入ると、吉井幸輔、西郷慎吾、大山弥助がいる。
「汝等な(わいどんな)、何バしちょる。早う戦支度(ゆっさしたく)をしなはらんか」
「どこを討つのでごわンど?」
吉井幸輔は、西郷の興奮をなだめようとした。「知れたこと」西郷はいった。
「伏見奉行じゃ。差引は俺(おい)がすっど」
差引とは、薩摩独特の軍用術語で、指揮という意味である。
その騒ぎの最中に第二報が入って、竜馬と三吉慎蔵が、それぞれ傷を負いながらもぶじ薩摩藩邸に入った−ということがわかった。
西郷は、ほっと大溜息をつき、こんどはいつものこの男の表情にもどって指示をしはじめた。

司馬遼太郎竜馬がゆく』4巻“怒濤篇”(文藝春秋)より抜粋

このくだりが結構好きなのです。