NHKBShi 『坂の上の雲』#8 “日露開戦” 17:30〜19:00

タイトルより真之(本木雅弘)の“昼寝”の部分が目立ちましたね。原作じゃ2行くらいで片付けられてるから、あれくらいのボリュームがあってもいいかと。これからの殺伐とした展開を思えばほんのひとときの春。律(菅野美穂)と季子(石原さとみ)のやりとりは和みました。
真之と一緒に季子が目にした戦艦三笠。『坂の上の雲』にこんな記述が。

戦艦三笠を英国のヴィッカース社に注文したのは明治三十一年であったが、しかしこの次期すでに海軍予算は尽きてしまっており、前渡金を捻出することができず、権兵衛は苦慮した。
このころ権兵衛は四十七歳で、海軍大臣をつとめている。
当時、西郷(従道)は内務大臣をしていた。ついでながら西郷というひとは、文部卿、陸軍卿、農商政卿から、海軍大臣、内務大臣と、大蔵大臣をのぞいてほぼ大臣のポストはぜんぶ経験したが、総理大臣だけはやらなかった。
権兵衛は、万策つきた。西郷になにか智恵はないものかと訪ねると、西郷は事情をききおわってから、
「それは山本サン、買わねばいけません。だから、予算を流用するのです。むろん、違憲です。しかしもし議会に追及されて許してくれなんだら、ああたと私とふたり二重橋の前まで出かけて行って腹を切りましょう。二人が死んで主力艦ができればそれで結構です」
三笠は、この西郷の決断でできた。
西郷と権兵衛とは、海軍建設においてはそういう関係だった。

司馬遼太郎坂の上の雲』2巻(文藝春秋)より抜粋

この“予算”は、小さな農業国家の国民の重税から捻出されたもの。それでも三笠を買わねば日本そのものがなくなる。明治という時代を愛した明治人。「あわれなほどけなげな日本人」は、列強の仲間入りをするために、政府高官も軍人も百姓も、それぞれが同じ気持ちで日本を背負っていたんでしょう。