録画済。
もしかしたら三成(山本耕史)は、今回死んだほうがよかったのかもしれない。いや死に損なったと言うべきか……。
「乱心されているのは殿下の方」
前代未聞の石田三成。と思います。少なくとも私が今まで観た中では。
やってくれるわ三谷さん。そして耕史君。
- 今回の笑えそうで笑えない件
- おこうさん(長野里美)の一連のシーン。まあご本人が元気そうで嬉しそうだからいいんでしょうけど「若殿様遠慮なく何でもお申しつけ下さいませ」の「若殿」ってなあ。そら源三郎(大泉洋)も叫ぶよ。
- 稲(吉田羊)の輿入れについてきちゃった忠勝(藤岡弘、)。「そっとしておこう」と昌幸(草刈正雄)。待って。城内の様子とか装備とか細かい縄張りとか筒抜けやんけ。と、思ったけども忠勝は純粋に娘のことだけしか考えてないからいいんだなうん。にしても徳川家の余裕ったら。重臣、それも徳川四天王のひとりがここにいていいんだなうん。
- 三成の尾張弁。彼は近江出身。普段使わないというか使えない*1秀吉(小日向文世)のお国ことばを使ったことに、どれだけの含みがあるのかちょっと考え込んでしまいました。巧く言えないけど、14話の清正(新井浩文)のじたばたに近い気持ちがあったのかと思ったり。で、秀吉への愛情たっぷりの「佐吉は正気でございます」に至ると。更に寧(鈴木京香)の「頼んだで」。泣いたよこれ。寧様ありがとう。この大河ではまだあからさまな尾張閥対近江閥という場面はないんだよね公私ともに。三成と清正(新井浩文)のお互いの甘えと意地っ張りな小競り合い程度で。寧も秀長(千葉哲也)も三成を秀吉を、豊臣家を支えるひととして認めてる。
- 寧、阿茶局(斉藤由貴)、茶々(竹内結子)の三すくみ。いや最初から笑えんなこれ。
- コナン君とか古畑任三郎とか言われてる源次郎(堺雅人)。結末を知ってるのでまったくもって笑えない。
「みんなあの人の事分かっとらんの。殿下は昔と少しも変わっとらん。昔から怖い人でした。明るく振る舞ってはいるけど実はそりゃあ冷たいお人。信長公よりずーっと怖いお人。そうでなきゃ天下など取れません」
寧のこういう言葉も珍しいかも。怖いところも含めて秀吉の魅力なんでしょうね彼女にとっては。でもそれって実は怖くないんじゃないかと思うんだけども(爆)。そうなるとやはり「そもじのみは、べつのうちのべつである」が効いてくるわ。三成が辞した後の寂しい横顔を見ても、彼女以外に天下人秀吉の正妻は考えられない。
「民の仕業だ。大勢の民が殿下に対して同じ思いを抱いた。それがあの落首になったのだ」
「だから殿下はあれほど恐れたのかもしれませんね」
民意ね。
リーガル2ラス前の古美門先生(堺雅人)を思い出しました。わかるひとにはわかる。
余話。秀吉が昔から怖かった、というのを寧の口から言わせたのが新鮮で、昔から怖かった冷たかったというのは小説では割と描かれてるんじゃなかろか。
「わたしは恐ろしい。今日の秀保めの、小今への仕打ちで、いよいよはっきりしたが……まぎれもなく我が家には、狂気の血が流れておる。のう、そうは思わぬか?」
(中略)
「同じ疑念を、じつはとうから、わたしも心中に抱いていました」
と、姉(とも)の目を見ずに秀長は言った。
(中略)
「言いづらいことです。まして旭日昇天の勢いで天下取りへの大道を驀進しつつある兄者の耳に、一族間の血にかかわる忌まわしい疑いなどささやいたら、どれほどの不興を蒙るか……。お怒りのすさまじさを思いやると、つい気持ちが萎えて、これまで黙っていたのでした」
「その藤吉郎からして、わたしには健やかな精神の持ちぬしとは受けとれぬ。芯のどこかに蝕みのある樹−そう見てきた。小猿と呼ばれていた幼少のころから、陽気と陰気の差がいちじるしい子でな、先刻の秀保同様、カッと激すると手のつけられぬ暴れ方をしたものじゃ。継父の竹阿弥どのを困らせぬいたのを、小一郎どの、こなたも憶えておろう」
(中略)
「どうなさるおつもりですか?」
「おれを蹴ったあの足、おれを打ちたたいたあの手を一本一本へし折って、なぶり殺しにしてやる。知れたことではないか」
秀長は戦慄した。他愛ない子供じぶんの取っ組み合いを、五十年もの長年月、どぶ泥の滓さながら怨恨の底に沈殿させていたばかりか、関白殿下と呼ばれる人が、いまさら田舎の老農夫相手に、復讐までをこころみようとする……。本気でそれを考え、実行を命じる眼の奥に、めらめら青く燃える炎を、秀長は常人のものと思えなかった。狂人が見せる偏執であり、平衡感覚の傾きである。
(能力の核に、狂気の素質を持つことで、一介の土民から、異常なまでの栄達をとげた兄なのか?)
とも疑えてくる。