『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』@シネマスコーレ(10:20〜)

すらりとした183cmの長身にあっさり顔の新君があの三島(爆)。若松監督の手駒の中で、三島を表現できる役者が他にいなかったのでしょうね。これは批判ではありません。監督の言う「モノマネ映画を撮る気はない。新の三島であればいい」という点において、新君のキャスティングは成功だと思います。
三島本来の誠実さ、真面目さ、大作家ではなくひとりの人間として苦悩する姿を、新君は実に丁寧に魅せてくれました。苦悩、とかいうと三島の一般的なイメージからは乖離してるのでしょうが、私的には納得の三島由紀夫です。更に言えば、三島の徹底的な美意識に貫かれたナルシシズムとインテリジェンスの表現者として、今のとこ新君以外考えられなくなっております(苦笑)。
そしてバルコニーでの演説。誰も耳を傾けない状況で見せた狼狽の表情。井浦新の真骨頂だと思いました。もちろん切腹シーンも彼渾身の、でしょうけど、私には寂しく頼りなげにも見えたあの顔が印象的でした。
あと、三島を訪ねてきて「いつ死ぬんですか」と問う少年が、山口二矢になっていたシーン。『豊饒の海』を感じました。魂の転生です。山口二矢〜三島を訪ねてきた少年〜森田必勝という転生。監督に座布団10枚。

もひとつ座布団10枚。三島最後の短編『蘭陵王』の1シーンを入れてくれたこと。冒頭の方で雅楽のBGMが流れたもんだからもしやと思ったんだけど……。大好きな短編なのです。若松監督ありがとうございます。
惜しむらくは、三島を決断させた森田必勝(満島真之介)が、三島に心酔していく過程のボリュームが少なかったこと。満島真之介が非常に良かっただけにね。初めは日学同の義理で参加していた森田が、「三島先生のために、自分はいつでも命を捨てます」の一文を書くに至った変化をもっと観たかった。
満島真之介、あの満島ひかりの弟です。あの姉にしてこの弟ありです。期待大です。『豊饒の海』第二巻“奔馬”の飯沼勲を彼で観てみたい。

絶対と相対、生と死、精神と肉体、理性と狂気、絶望と快楽などの観念を表裏一体とするきびしい二元論に生き、絶対を垣間見んとして果敢に死んだ日本の天才作家、三島由紀夫の魂魄よ、安んじて眠れかし。

『文芸読本 三島由紀夫』(河出書房新社) 澁澤龍彦の文より抜粋

http://www.wakamatsukoji.org/11.25/


余話1。制服フェチの戯言。新君は『楯の会』の制服が異常に似合います。いやまあモデルさんですからコスプレ(爆)はお手のものでしょうけど、それにしてもハマりすぎ。決起の朝、ひとり身支度をし、白い手袋を嵌めて、鏡に映して帽子を少し直すとこ超萌え萌え。すいません、基本ミーハーなもので。
余話2。切腹時にちゃんと臍下丹田まで衣服をくつろげてた点に拍手。