NHKBSプレミアム 『八重の桜』#5 “松陰の遺言” 18:00〜18:45

録画済。

この桜田門外から幕府の崩壊がはじまるのだが、その史的意義を説くのが本篇の目的ではない。ただ、暗殺という政治行為は、史上前進的な結局を生んだことは絶無といっていいが、この変だけは、例外といえる。明治維新を肯定するとすれば、それはこの桜田門外からはじまる。斬られた井伊直弼は、その最も重大な歴史的役割を、斬られたことによって果たした。三百年幕軍の最精鋭といわれた彦根藩は、十数人の浪士に斬りこまれて惨敗したことによって、倒幕の推進者を躍動させ、そのエネルギーが維新の招来を早めたといえる。この事件のどの死者にも、歴史は犬死をさせていない。

司馬遼太郎『幕末』(文春文庫)“桜田門外の変”より抜粋

この前には浪士たちの襲撃の様子が描かれてます。生々しく凄惨。井伊の首を持って逃げる浪士、追う彦根藩士。どちらも満身創痍で血みどろで。
暗殺を徹底的に否定した司馬さんが唯一の例外とした桜田門外の変
芹沢鴨佐藤浩市)が「尽忠報国の士、天晴れなり」と叫んでいたのを思い出しました。
攘夷か開国か*1。日本を守る、その思いは変わらないのに、なぜ日本人同士で殺しあわなければならないのか……。
歌舞伎で『井伊大老』という、変前夜の井伊を描いた作品がありまして。
鬼畜・国賊と世間の謗りに苦しむ井伊は、一緒に死ぬ覚悟をしている側室・お静の方の「正しいことをしながら世に埋もれたままの人もある」という言葉に覚悟を決めます。ラストは舞台暗転、二人へスポット。明日は桃の節句というのに、窓の外は雪。
「来世は間違っても大老にはなるまい」
緞帳が静かに降りて幕。
大老就任という火中の栗を拾った井伊(榎木孝明)。
彼の覚悟を知る容保公(綾野剛)もまた……。
吉田松陰小栗旬)に合掌。
正四位上行左近衛権中将兼掃部頭井伊直弼に合掌。
そして、うら(長谷川京子)の生まれなかった子供に合掌(涙)。

*1:ものすごく大きく分けてですけども。