朝日新聞社『週刊司馬遼太郎Ⅳ』

週刊 司馬遼太郎 IV (週刊朝日MOOK)

週刊 司馬遼太郎 IV (週刊朝日MOOK)

幕末の話はほんのちょっと。私は時代を問わず“司馬遼太郎ファン”なので構やしませんが。砥ぎ師・苅田直治氏の土方の“突き”の話が興味深い。新選組で“突き”といったら総司だもんね。

苅田氏が)これまで何千口も研いできたなか、土方家の「兼定」を見たとき驚いたという。
「柄の部分に巻いてある布の痛みが相当激しく、かなり使い込んだものだということがわかります」
刀は、野球のバットやゴルフクラブと同じで、小指と薬指で柄をしっかりとにぎる。そのため小指付近の布が傷むのだが、土方の「兼定」は人さし指と親指付近が傷んでいる。
「突きを繰り返したのでしょう」と、苅田さんはいう。上から振り下ろさず、何度も突けば人さし指に力が入る。そのとき、にぎりこぶしの上部が擦り切れるのだという。土方に突きをくらった男たちのうめき声が聞こえてきそうな話ではある。

−本書“司馬遼太郎剣豪列伝第6回『新選組血風録』の世界 菊一文字の生涯”より抜粋−

不覚にもこの話は初耳。土方歳三資料館主催の苅田氏の公演を聴いた方はご存知かも。
この特集の最後は、森要蔵・寅雄親子、その子孫について。彼らを描いた『上総の刺客』はいつ読んでも泣く。