中京テレビ 『怪物』 21:00〜23:08

最近は随分手軽に、というか短時間で人間溶かすことができるんですねえ。

哀れな小動物を、硫酸濃度、塩酸との混合比率、分量等をさまざまに変えた中に浸して、溶解時間を測る。モルモットと要因との相関数値を割り出して、これを正確な八代の体重にかけ合わせて、相応値を算出した。(中略)数度にわたる実験の結果、重クロームソーダ八十キロ、水七キロ、九十五パーセントの濃硫酸九十キロの混合液が、水槽を欠損せず、肉質を完全溶解するに六時間三十分という数値を得た。

森村誠一自選恐怖小説集『人間溶解』(角川ホラー文庫) “人間溶解”より抜粋

“人間溶解”は40年前の作品。話のポイントとしては人間が溶けるとどうなるか。その結果、完全犯罪の目論見は泡と消え、そして誰もいなくなった……。もちろんそこに至るまでにはちゃんとミステリの要素があるので、ホラー要素は薄く、短編ながら面白かったです。
『怪物』は溶解は単なる手段。描かれるのは人の心の闇。その澱みの深みに堕ちていくもの、抜け出すもの。抜け出した小さな光が闇を凌駕する。
面白かったかというと、うーん、途中でだいたい解っちゃったので、ミステリとしてはイマイチかな。原作は評価高いようだけど、映像化に向いてなかったのか脚本が甘かったのか。ま、そんなの今に始まったことじゃないやね。