- 作者: 笠間千浪,鈴木彰
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2017/08/10
- メディア: 文庫
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このツイ見つけて、Amazonで予約して発売日の翌々日8/18に届いてソッコー読んだのに、記事にしてなかった(汗)。8月のライブラリーは『[現代語訳]賤のおだまき―薩摩の若衆平田三五郎の物語』。義兄弟の契りを結んだ美少年三五郎と青年清家――明治期硬派男子の座右の書とされ、森鴎外らの著作にも登場、一大ブームとなった伝説の物語。作者は「薩摩の婦女」? 女性の執筆可能性と物語誕生の背景に迫る解題付き
— 平凡社ライブラリー (@Heibonsha_L) 2017年6月26日
出会いはもちろん中学生の時に読んだ森鴎外『ヰタ・セクスアリス』、と言いたいけど、その中で“賤のおだまき”という言葉は出てきてなくて、内容のほかには“平田三五郎という少年の事を書いた写本”とあっただけ。後に何かの本で『賤のおだまき』と呼ばれてるのを知りました。それから氏家幹人『武士道とエロス』に出てくるわ、白洲正子『両性具有の美』に出てくるわで、そら読みたくなるじゃないですか(苦笑)。写本というか明治期のなら国立国会図書館デジタルコレクションで読めますけど、読みにくいったら。あと、https://twitter.com/syudo_bot(爆)から拾い読み。
で、忘れた頃にやってきた現代語訳(嬉)。刊行が2017年8月で、翻訳の鈴木氏によると2016年4月から取りかかったとのことで、『西郷どん』とのタイアップかと思ったら、帯にもその手のことは何にも書いてないのよねー。謎。
とか思ってたら最近ちょこちょこ出してきてた(笑)。タイアップではないようだけども。
\「西郷どん」見ながらこれ読んで〜/
— 平凡社ライブラリー (@Heibonsha_L) 2018年1月7日
西郷どんも読んだ(たぶん)薩摩武士たちの座右の書『賤のおだまき』…「わが薩摩の風俗は雄悍で武を好み女色を近づけない。義を見れば必ず行う」(賤のおだまき跋)を実践した理想の男同士の物語。昼は武芸に励み、夜は手枕をし寄り添う二人の運命やいかに! pic.twitter.com/So3KW2CT2Y
(´-`).。oO…もう帰ろかな……。帰りたいな……。家で西郷どんの録画みて…、平凡社ライブラリー『現代語訳 賤のおだまき』読もうかな…。
— 平凡社ライブラリー (@Heibonsha_L) 2018年1月22日
男色が盛んでありながら男色についての文献が少い薩摩の国に、唯一の資料ともいえるものはこの物語ぐらいで、男色というのもちょっと気がひけるほど純真無垢な男の友情譚なのである。
ただし、文章はけっして上手とはいえない。
(中略)
室町時代の教養ある都びとの手になる物語とは雲泥の差で、大事なところではきまって七五調に逃げるので、興をそがれること甚だしい。それならいっそ下手は下手なりに地の文章で押し通した方がいいと思うのだが、この本の読者は、正月元旦に第一番に読むというほど気を入れていたのだから、薩摩の人々にとっては、男色の文献というより道徳の書とみなされていたに違いない。
かなり長い物語であるが、全部暗誦していた人たちもいるそうで、覚えやすいように七五調になっていたのかも知れないし、はじめは薩摩琵琶などの歌いものではなかったかと想われる。白洲正子『両性具有の美』(新潮社)“賤のをだまき”より抜粋内容はさておき、文章についてはけちょんけちょんの白洲氏。そこまで言わんでも(爆)。
まあわからなくもないけど………。現代文では田舎臭い七五調というのは感じられないので、原文併記という手もあったかも。「花のおもかげ吉野山、峯の桜か秋の月、雲間を出る風情より、猶あてやかに麗しく、容色無双の少年たり去れば、其頃国家乱世の折なれど、流石に堪へぬ人心」 from『賤のおだまき』
— 衆道古典bot (@syudo_bot) 2018年3月7日
一説には薩摩の女性が作者とのこと。女と歩くだけで不純という薩摩人はそのこと知ってたんでしょうかね。この訳の底本の序文(明治17年3月、四方子誌す)にあたる部分に“聞けば、この書は西国薩摩の婦女の手に成ったものだという”とあるので、少なくとも明治17年以降の薩摩隼人の目には触れてるわけで。
まあともかく巷のBL小説を想像して読むと拍子抜けな、白洲氏の“男色というのもちょっと気がひけるほど純真無垢な男の友情譚”まんまでした。おそらく、この二士のことは、不変の道理をもってしては論じることができないだろうが、この話は情に始まり、義に終わる。そして、真の心にあふれ、義烈に貫かれている。百年の後にこの話を聞く者でも、わきあがる感興を抑えることができないであろう。ああ、彼らは義を好んで、女色を遠ざけ、臣下としての務めに力を尽くし、斃れて後に果てたのであった。この書から得るものは少なくない。