作：中島かずき
演出：いのうえひでのり
出演：小栗旬／山本耕史／成河／りょう／青木崇高／清野菜名／近藤芳正／古田新太／河野まさと／逆木圭一郎／村木よし子／礒野慎吾／吉田メタル／保坂エマ／武田浩二／他
過去2回、下手前方席で見えなかったものが色々見れてよかったわー。
「来い、太夫！」ってあんな顔して言うんだお蘭。そりゃ太夫も殴るよ。殴って泣くよ。
一昨日の13日のマチネは「来い」がなくて、柔らかくて優しい「太夫」だけが聞こえた気がしたんだけど、多分気のせいだな私の。でも「太夫」のトーンが明らかにマイ初日＆今日とは違ってた。
夢見酒のとこ、ソワレはほぼ真横からのカット*1。
これ絶対やばいやつじゃん。無理矢理感どこいったの。触れなば落ちんにも程がある。精神的な和姦だよ。かといってエロくはないのよ。もろともに過去の幻影を抱いて現世の地獄に堕ちんとするような誓いの儀式。ずっとずっと深い奥底では同じところにいるんだなふたりは。あの一瞬、宗教画のようでした。
無界屋のジェノサイドで、血刀を自分の衣の袖できっちり拭きとってまた斬りにいく。あれね、斬った女たちの衣で拭いてほしかったな。外道味増すやん。その昔、『新選組!!』の撮影で、副長が斬り倒した敵兵の軍服で刀の血を拭ってたというのを思い出したのよ。本編ではカットされちゃったけど。→http://d.hatena.ne.jp/moonblue/20120713/p1
黒衣は血を吸っても吸ってもその赤が闇の中に消えていく。澱となって溜まっていく。見えない血汐を纏ったブラック・ウィドウ最高。
花も背負う。業も背負う。背負うものが多ければ多いほど蘭の華も匂い立つ。彼岸の花も霞むほどに。
あんなにいろんなもん背負ってんだ。そりゃ猫背にもなるってもんだろうよ（そこか）*2。
言葉も身体も耕史君が表現するものに、近いとか遠いとか本来関係ない。彼の声が聞こえる限り、彼の姿が見える限り、彼が伝えたいものは全てこちらに届く。ただ困ったことに、今回みたいに顔が見えすぎると、台詞いらねーとか思っちゃう時があるんだよね。あまりの表現力に表情だけで十分伝わるよ、無言が最高の台詞みたいなね（苦笑）。
そして顔すら見えず台詞もない、夢見酒を飲んだあと血塗れてゆらりと立つ背中。瞬間に闇が生れる。生まれたとわかる。山本耕史の真骨頂。
更にそのあと、椅子の上で殿の面をすっごい愛おしく見つめる顔ったら。凄まじき色気。決して夢見酒に溺れてるだけじゃないよあれ。殿にしか見せたことがない表情だろうな。殿とふたりだけでいるときにしかしない顔。ふたりだけの時というのは、だからそういうことですようん。
気のせいか照明のせいか、血の赤が白い肌に反射してるのか、淡く桜色に上気してるように見える顔が生々しくて美しくて相当ヤバイ。
水蘭のふわりと結わえた髪も、白蘭の解かれた髪*3もいいけど、黒蘭の高く結った長いポニテが肩を越えてくるのが好き。わかるひとにはわかる。
サリエリに続いての着衣エロテロ。水蘭、白蘭の裾と足袋間にチラ見えする足首絶対領域が尊いわ。黒蘭はそのチラ見えすら無いのに、闇のように黒い髪と装束と雪のように白い肌と飛び散る鮮血（実際に無くとも見えるのよ）のコントラストが煽情的なことこの上ない。
誰か武田泰淳の『十三妹』巧く纏めて面白くしてやってくれないかな。耕史君は白玉堂ねもちろん。元の『三侠五義』の方では、八卦銅網陣で血達磨になって死んでたと思うので（爆）、『十三妹』の方で十三妹に首ぶった切られて死ぬの希望*4（結局死ぬ）。
耕史君の殺陣は磐音あってのものだというのはわかってるものの、アレはいまだに好きになれないなあ。殺陣そのものがあかんというより、撮り方があかんというのは何度も書いた。カメラワークの絵コンテがまるで出来てなくて、ブツ切れで連続性がないの。それを思うとゲキシネスタッフの素晴らしさよ。
まあその前に川原さんの付ける殺陣がもちろん良いんだけども。磐音の妙に間延びした太刀筋が完全に払拭されてて、ザ・新感線の殺陣でした。でもどっぷりというわけじゃなく、新感線のタテノリの部分と、従来の時代劇の殺陣の横の流れが綺麗に混ざってて、耕史君オリジナルっぽくなってた気がする。そしてスピード感があるのに重い剣になってた。鈍いのではなく重い。速度に乗せて振った刀身を一瞬止めて、引き斬る時に“ひとを斬る”重みがある。殺陣用の軽い模擬刀で、それも映像ではなくナマの舞台であの重さを出せてるのにはほとほと感心しました。
追記したいけど時間ないな(-_-;)
